レジストリの保守アプリケーションとして、Win98 以降に付属のこのツールだが、レジストリのバックアップ・リストアの他に、レジストリを最適化する機能を有している。

　使用法については雑誌や他の Web ページでくどいほど紹介されている。


1) Win98 を DOS プロンプトモードで再起動する． 2) scanreg /fix 3) win



　これだけである。他のオプションは「scanreg /?」で表示される。しかし表示されないオプション、いわゆる隠しオプションとして「/opt」がある（※参考：「Windows 98 エキスパートガイド」P.100（初版/翔泳社刊)）。使い方は次の通りだ。


1) Win98 を DOS プロンプトモードで再起動する． 2) scanreg /fix 3) scanreg /opt 4) win



　これらのオプションの機能については、当ページ最下部で述べる。

■　RegCon と Scanreg の違い

　結論から言うと、両者の主機能を比べた場合、レジストリの再構成結果を比べた違いは「全く無い」と言える(ただし OS が Win98 の場合)。つまり、どちらを実行しても、同じ再構成結果が得られるのだ。この結論を導き出した実験を、当ページ最下部に公開する。
　RegCon は GUI モードで動き Windows API の１つを使用してレジストリを再構成する。一方、Scanreg は リアルモードで Windows API に依らずプログラム内のロジックのみでレジストリの再構成を行う。
　基本的に両者は別物なのだが、再構成結果が同じになるという評価が出た点から推すに、SCANREG は RegCon がレジストリ再構成に使用している Windows API のロジック自体を内包しているのではないだろうか。もし SCANREG を Windows の MSDOS ウインドウで実行しなければならないのなら、Win32 コマンドアプリケーションとして Windows API をコールしていることも考えられよう。しかし Windows API 関数群は、それ自体で閉じている関数はおそらくほとんどなく、外部の DLL にある API や Windows システム関数のコール、Windows 環境でのメモリアクセスを期待している。SCANREG をリアルモードで実行しなければならない以上、Windows API をコールしてレジストリを再構成している可能性は無いに等しい。行っていることは RegCon と同じように見えても、設計思想は違うのである。
　また、SCANREG が内包していると思われるレジストリ再構成ルーチンは、Windows 98 の ADVAPI32.DLL と同等のもののようだ。実は過去にも RegCon と SCANREG のレジストリ再構成結果を比較したことがあり、その時には大きな違いが現れていた。比較に際し元のレジストリを同じにはしたが、今思えば OS が Win95 だったようだ。

　さて、再構成機能は同じらしいが、その他の機能についてはどうだろうか。



	RegCon	SCANREG
実行環境	Win95/98 GUI	Win98 上の コマンドライン または CUI
実行時 必要メモリ	不問	コンベンショナル384KB以上 XMS 8MB以上
実行操作	クリック２回	コマンド打鍵
Windows マルチユーザ レジストリ	対応	非対応 (デフォルトレジストリのみ)
対象 レジストリ サイズ	不問	8MBまで
幽霊キー 対処	再構成が止まることがある	扱いに関しては不明
再構成の中止	可能	殆ど不可能
レジストリ バックアップ	自動	コマンド打鍵時オプション または SCANREGWの自動BackUp
バックアップ 個数	１つ	SCANREGW.INIに記した数 （デフォルトは５つ）
レジストリ リストア	プロンプトモードで起動後 バッチファイル実行	コマンド打鍵時オプション
レジストリ 修復機能	なし	あり （内容は不明）



　どちらも一長一短があり、結局のところ、どちらを使うかはユーザの好み次第と言ったところか。比較項目の背景を桃色にしたところは、特にクリティカルな部分だと考えたポイントだ。参考にして欲しい。

■　もっと隠しオプション

　SCANREG をバイナリダンプしてみると、幾つか Undocument なオプションがあることが分かる。実際にオプションを指定して実行を試した結果を表に示す。


公開	オプション	挙動
	DIR	？（CUIで起動した） （適当なフォルダを指定しても進まない）
○	BACKUP	レジストリをバックアップする
	NOP	レジストリチェックのみ
△	OPT	レジストリ空きエリアを縮小する （下記実験参照）
	AUTORUN	？（実行しても反応無し）
○	RESTORE	退避したレジストリを戻す
○	COMMENT	退避書庫に記入するコメント
	DOSSETUP	？（実行しても反応無し）
	SETUP	？（実行しても反応無し）
	WIN	？（何故かCUIで起動した）
	FIXBAD	必ずエラー表示を行う修復作業？
○	FIX	Win98-ADVAPI32同等のレジストリ再構成 （下記実験参照）



　FIXBAD オプションは FIX オプションと行っていることは変わらないようだが（下記実験参照）、最後に必ず


システムファイルにエラーが発見されましたが 修復されました 　O K



というウインドウが表示される。Registr!p で調べても再構成前後でエラーになっている箇所は特になく、再構成も成功して新しいレジストリも生成しており（事実、そのまま Win98 を起動して今使っている）、まったく謎のオプションである。「修復された」のだから、良しとすればよいのか。

■　RegCon、Scanreg 機能比較実験

●環境

・PC-9821Xa7(K6-2-333MHz/128MB/U-SCSI 8.4GB)
・Windows 98 (ver 4.10.1998)
・シングルユーザモード


●手順

1) RegCon 直前の system.dat と user.dat を退避する
2) RegCon を実行して、再構成レジストリを作成する（system & user.cln）
3) 再起動してコマンドプロンプトにする
4) (1)で退避したレジストリを Windows フォルダに上書きし、再構成前の条件を同じにする
5) scanreg /fix を実行し、プログラム終了後のレジストリを退避する
6) (1)で退避したレジストリを Windows フォルダに上書きし、scanreg /opt を実行した後のレジストリを退避する
7) (1)で退避したレジストリを Windows フォルダに上書きし、scanreg /fixbad を実行した後のレジストリを退避する
8) 続けて、scanreg /opt を実行し、その後のレジストリを退避する
9) 以上６種のレジストリを、拙作レジストリ解析ソフト「Registr!p」にて解析する



●結果
　Registr!p の解析レポートより「1. Using Rate」を比較する。
　SYSTEM.DAT には RGDB ブロックが多く、比較表を作ってみるとページが非常に重くなったので割愛した。
　ということで、USER.DAT の比較だ。RGKN、RGDB それぞれ１行に３段記してあるが、上から「使用中レジストリサイズ」「Empty Area」「Dead-Gap」のサイズ（単位：バイト）である。



	(処理前)	REGCON	SCANREG /FIX	SCANREG /OPT	SCANREG /FIXBAD	/FIXBAD 後、/OPT
RGKN____ RGDB0000 RGDB0001 RGDB0002 RGDB0003 RGDB0004 RGDB0005 RGDB0006 RGDB0007 RGDB0008	58,380 2,920 108 18,867 12,687 1,182 59,504 1,865 39 61,403 0 5 53,070 8,299 39 51,269 1,883 64 39,175 5,791 58 47,467 5,474 275 32,296 407 33 48,541 9,236 3,631	58,380 2,920 108 31,479 5,353 0 56,536 744 32 61,377 0 31 61,381 0 27 50,543 2,673 0 42,047 2,977 0 50,652 2,522 42 42,690 2,307 27 14,887 1,458 7	58,380 2,920 108 31,479 5,353 0 56,536 744 32 61,377 0 31 61,381 0 27 50,543 2,673 0 42,047 2,977 0 50,652 2,522 42 42,690 2,307 27 14,887 1,458 7	58,380 2,920 108 18,867 399 1,182 59,504 1,865 39 61,403 0 5 53,070 107 39 51,269 1,883 64 39,175 1,695 58 47,467 1,378 275 32,296 407 33 48,541 1,044 3,631	58,380 2,920 108 31,479 5,353 0 56,536 744 32 61,377 0 31 61,381 0 27 50,543 2,673 0 42,047 2,977 0 50,652 2,522 42 42,690 2,307 27 14,887 1,458 7	58,380 2,920 108 31,479 1,257 0 56,536 744 32 61,377 0 31 61,381 0 27 50,543 2,673 0 42,047 2,977 0 50,652 2,522 42 42,690 2,307 27 14,887 1,458 7
whole	470,324 48,562 5,434	470,324 20,954 274	470,324 20,954 274	470,324 11,698 5,434	470,324 20,954 274	470,324 16,858 274




●結論
　RegCon と SCANREG /FIX の結果には、相違が全くない。両者の再構成機能は同等だと言えよう。
　SCANREG /OPT と処理前を比べると、レジストリの Empty Area だけが一部小さくなっている。Win98 起動時に「SCANREGW /AUTORUN」がレジストリの無駄な領域を削除する機能に近いものかもしれない。この「無駄な領域」が Registr!p で言うところのどのエリアに当たるのかは分からないが（多分、Empty だろう）、SCANREGW は 無駄領域が 500KB 以上になったときに無駄領域縮小を行うが、SCANREG /OPT はそれを任意のタイミングで行えると考えれば良さそうだ。
　隠しオプション /FIXBAD は、メッセージを余分に吐くこと以外、/FIX と同じようである。本当に問題のあるレジストリに対しては、/FIX とは何か挙動が変わるかも知れない。
　念のため書いて置くが、/OP実施後の結果について、/OPT のみの時と /FIXBAD→/OPT の場合で数値が違うのは、/OPT する対象のレジストリの内部が異なるためである。前者の対象は「処理前のレジストリ」、後者は「/FIXBAD」後のレジストリだ。

　比較表の右端は、当ページの冒頭で記した、レジストリ再構成法の結果である。レジストリの「Empty Area」「Dead-GAP」ともに減少しており、効果があることが実証された。徹底的にレジストリを痩せさせたいなら、「/FIX」に続けて「/OPT」だ。